RE:2





 1188番の少女は『手加減』と言った。

 あの細い腕――いや指先一つで、大男を観客席まで吹き飛ばして、手加減。リングから観客席までは安全の為に余分なほど距離が取られている。それを汗一つかかずに埋めた少女は、あまつさえ相手の心配さえしてみせた。

 不釣り合いだ、と審判の男は思った。

 あの温厚な性格で、どうして闘技場になんて来たのか。
 そして何故あれほどの力を得ようと考えたのか。

 考えたって詮無いこと。

 しかし彼は薄ら寒さすら覚えつつも、思考を止めることができなかった。

 ――もしかしたら自分は、とんでもない化け物を見逃したのかもしれない。



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